ミニーズのお婆ちゃんオマの助言

ミニーズたちのお婆ちゃんオマは、ドイツでもかなり元気でアクティブなお婆ちゃんだ。

本人も実年齢を感じたことがないと豪語するほど健康面の不安もなく、ハイキングもするしミニーズのベビーシッターも喜んで引き受けてくれる。70歳を過ぎてもミーとワインを1本飲みあかせるほど酒にも強かった。

さてミスターの妹タンテには男の子が2人いるのだが、従兄弟にあたる彼らとミニーズたちとの年齢は10年以上離れている。

だいぶ前の話になるが、年の瀬が近いある日、ミーたちとオマはタンテの家の朝食に招待された。当時ちょうど15歳で思春期の真っ最中だったタンテの長男は、みんなが来るので仕方なくといった様子で、普段は昼まで寝てるのに、朝早く起こされて食べたくもない朝食を寡黙に口に運んでいた。

思春期の子供がいる家庭に慣れていないミーは、タンテの長男が醸し出す場の重い雰囲気と会話のない朝食に耐えられず、あえて長男にしゃべらせようと質問をした。

「シルベスター(大晦日)は何か予定あるの?」
長男はタンテ夫婦が何か聞いても、ろくすっぽ返事もしないが、ミーが話しかけると返答しないと失礼と思うのか、反抗的な態度にならず普通に返事をする。

「うん、友達の家のパーティに行く」

ミーはこの頃、タンテ夫婦がミーたちを頻繁に家に招くのは、この長男と話したいからなんじゃないかと思ったことがある。自分の家族だけだと長男は反抗期全開状態になり、口喧嘩に発展することも多いが、ミーたちのような部外者がいると、緩和剤となって長男も反抗心むき出しにならず、一応は食卓について会話も少しはするのである。

久々に発した長男の言葉に反応して、タンテ夫婦は矢継ぎ早に質問を始めた。

「誰の家に行くんだ?聞いてないぞ」
「まだはっきりとは・・・決まってなかったから」

「誰が来るの?」
「だいたい30人くらい・・・」

「親はいるの?」
「・・・旅行でいない・・・って」

「その親は家で子供だけでパーティするの知ってるの?いいって言ってるの?」
「・・・うん」

まだ15歳そこらの子供たちが集まって、大晦日に酒を飲んでお祝いする。それを快諾して旅行に行く家庭がある、ということに正直ミーは驚いたのだが、ミスターもその場にいたミニーズの婆ちゃんオマ(もちろん長男の婆ちゃんでもある)も、そのことには全然反応せずに食べ続けていたから、ドイツでは驚くことではないのね、とミーは一人で納得し、はてタンテ夫婦は長男に許可を出すのかどうか、興味深く続きに耳を傾けた。
すると今まで会話に口を出さなかったオマが顔を上げ、

「女の子も来るの?」

と、長男に質問した。大事な質問だ。タンテ夫婦はそろって長男を凝視した。

「うん、・・・半分くらいは」

そしてオマは言った。

「じゃ、コンドーム、持って行かないと!」

その場は固まった。誰も言えない、話の核心を一気に突いたのだから。

ミーは笑いそうになるのをこらえて長男を見た。かわいそうに・・・、長男は顔を真っ赤にして、うつむいていた。

当たり前だ。まだ15歳という過敏な年頃で、特に性に関しては親や家族に触れられたくないだろうに、よりによって婆ちゃんのオマに、早朝からコンドームの助言を受けたのだから。

「・・・・・・・・オマ・・・・・・・・」

と小さく呟いた彼は、なんてこと言ってくれたんだよ・・・と言いたげな雰囲気を連れて自分の部屋に引きこもり、その日はもう姿を見せることはなかった。

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