一人っ子の気分 その②
まずは年末にカナがタンテ宅にお世話になることに。
ロックダウン中なのでできることは限られているが、親戚の家も泊まりに行くとなるとワクワクするもの。カナは荷造りからして気合いが入っていた。
3泊の予定なのに楽に1週間は外泊できそうな量の荷物を、スポーツバッグ2つ分にまとめてきた。3割は減らせそうなその荷物を再チェックする気力はなかったので、歯ブラシなどの必須品だけ入れたかどうか質問して、あとは好きにさせることに。
2人の成人した息子がいるタンテは、かねてから女の子を欲しがっていたのもあり、『娘と一緒のママ気分』でカナとの女子泊を楽しんだようだ。コロナで人の気配のなくなったミュンヘンをゆっくり歩いたり、雪遊びやお化粧をしたり、犬の散歩に行ったり。最終的に滞在は3泊から5泊に伸びて、カナは大満足で大晦日に帰宅した。
親からの小言は聞かなくていいし、面倒な弟もいないからケンカもない。一人っ子のように何泊も過ごす機会なんてなかなかないから、しっかり羽を伸ばしたようだ。
カナ不在の間、末っ子ファビアンも家で自分時間をマイペースに過ごせることに幸せを感じたようだ。イライラを連発するティーネイジャーのカナから、せかされることも不平を言われることもない。
元来おっとりとした性格の彼は、ミーとミスターを自分1人で独占できること自体が新鮮だったようだ。カナがいない間に一緒にやりたいことリストを作成し、1つ達成するごとに満足げに微笑んだ。ドイツの3・4.5年生は行事や学校関連の変化が多く、カナのイベントやその送迎に時間をとられ、ファビアンのことが後回しになっていたことを改めて申し訳なく思った。
新年から4泊で義母のオマ宅へ行った際も、カナがいない”家時間”の延長のように、のんびりケーキを焼いたり、カードゲームや散歩をしたりして過ごしたそうだ。高齢のオマにとっても生意気&反抗期まっさかりの10代より、7歳の子の方が扱いやすく楽しいに決まっている。
カナはカナで、普段はあまり甘えてこないのに、ミーやミスターにベッタベタにくっ付いてきた。ゲームをすると必ず怒ったりムキになったりして楽しい皆の気分を台無しにするのに、弟不在というだけでマナー良く最後までプレイする。姉に追いつこうとする弟が鬱陶しく、追いつかれると不快でやる気をなくすという種の、イライラがないからだろう。
じっくり1人ずつと時間を過ごすことで、その子の新しいというか本来の姿を垣間見て思う所もあったから、これからも機会があれば『一人っ子時間』をお互いに楽しみたいと思う。