リサイクルのトイレットペーパー
ミーたちの住むドイツ南部バイエルン州でも、コロナウィルスの感染者が増加してきた。
そろそろ昨春(2020年3月)のような規制や移動制限が課され、ハムスターコイファー(ドイツ語でハムスターのように今必要でないものまで買い込む人たちのこと)がまた大量にトイレットペーパーを買い占めるかもしれない。
そうなる前に一袋買っておこうと、他に買う物もあったついでにドラッグストアに立ち寄ると、時すでに遅し・・・。トイレットペーパーの棚は空になっていた。
げっ、また!なんで1家庭1袋ずつにしないのよ・・・。
昨春はトイレットペーパーの品切れが3週間ほど続き、我が家は本当に焦ったのである。少しショックを受け棚の奥に進むと、2種類のトイレットペーパーはまだ売れ残っていた。1つは超高級で小パックのトイレットペーパー。もう1つはリサイクルトイレットペーパーである。リサイクルの方は普通のより少し値段が高い程度だったので、とりあえずこちらを1袋買って帰ることにした。気に入ったら今度また買えばいい。また在庫があればの話だが何袋も買う緊急性もないし、買わない方が本当に必要な人たちの為でもある。
家に帰りさっそく試すと、リサイクルだけあって普通のより少々堅いが、まあ問題ない。値段と我が家の使用頻度を考えると、超高級で小パックのより、リサイクル品でガマンする方がいいだろう。
次の日の朝1番、反応したのは末っ子ファビアンだった。
「ママ・・・、なぁに、あのトイレットペーパー?・・・」
神妙な顔つきで聞いてきた。
「普通のがもう売ってなくて。違うのにしてみたんだけど・・・どう?」
聞かなくても返事が想像できたのだけれど、一応感想を問うと、
「なんかね、ゴワゴワしててね、・・・なんかこう、カタいの!」
「あー・・・そうかも。リサイクルのだから、やっぱり少しそんな感じだよね」
と相づちを打つと、
「もうファビね、いつもみたいに拭いたら、カタくてお尻がキレるかと思ったよ!」
「(大笑)そっか、そっか。じゃ次からは、かる~く、やさしく、拭くようにしようね」
と言うと、
「でもママ、なんであんなの買ったの?」
超高級品も残っていたことは、ここではあえて言わず、
「いつも買ってるのが、コロナでまた売り切れちゃってなかったのよね」
で済ますことに。
「ふーーーん。また、なくなっちゃったんだ・・・コロナのばか!」
「(苦笑)」
「でも、もうリサイクルは買わないでねっ」
「はい・・・(汗)」
次に反応したのは、長女カナ。
「ねえ、ママ、このトイレットペーパー、なんかヘンだよ」
「ん?どういうふうに?」
「だってヘンだから」
いつも思うのだが、彼女の説明能力は10歳の子にしてはかなり低い。
「だってカタいよ!なんかヘン、キライ!」
リサイクルトイレットペーパーである事と、購入の経緯を説明すると、同じく、ふーーーん、と言って興味なさげに去って行った。
まったく反応しなかったのがミスターだ。
我が家の中で一番長い時間をトイレで過ごし、人一倍に不平を言うミスターが、不思議と無反応で静か。ここはドイツ人気質で、小さいことはあまりこだわらないのか、尻が拭ければ何でもいいと思ってるのだろうと、勝手にミーは決めつけ、とりあえず買ってしまった1袋分を皆が無事に使い終わってくれることを祈った。
3週間ほどして、カナの用でドラッグストアに立ち寄ったら、いつも購入していたトイレットペーパーが棚に並んでいた。ハムスターコイファーも買い尽くして満足したか、ミーたちがたまたまラッキーで在庫のある時に来店したのかは分からない。
積んであるトイレットペーパーを見て、
「ママ!あるよ、いつものが!買って、買って!」
とカナがせかしてきた。いつもの1袋と比べると、半分のロール数で値段は上がり、1家庭1袋の制限が課されていた。そうカナに違いを指摘すると、
「それでも、ママ、買って!これじゃなきゃイヤ!もうリサイクルのはぜったいに買わないで!」
と食ってかかってきた。そんなに気に入らなかったんだ、リサイクルのトイレットペーパー・・・。
「これ買わないでリサイクルの買ったら、カナはもう、お尻拭かないから!」
「ほう、拭かないでいられるなら、やってみぃ?」と言ってみたかったが、逆上されると面倒だし、彼女に言われなくともいつものを買うつもりだったので、カナに従う形で普通のをショッピングカートに入れた。
いやはや、リサイクルのトイレットペーパーが、こんなに子供たちから拒否されるとは思ってもみなかった。